「芸能活動のこと聞いた時は驚いたけど、精一杯頑張ってよね!」



 成迫侑(なるさこ ゆき)が、雪那と頼星の背中をトンッと叩く。彼女はボーカル担当で、海松茶のロングヘアーをシャンデリアのように派手な飾り付きゴムでまとめている。

 彼女の瞳は、印象的な強い光を放つ。その自信溢れる出で立ちも、まさにボーカル向きだ。



「とりあえず、みんなで卒業できるから良かったねぇ。」



 キーボード担当の竹松都香(いちか)が、柔らかく笑う。手触りが良さそうなメープルブラウンのウェーブがかった長髪の彼女が笑えば、春風を頬に受けたような気分になる。



「ごめんね、心配かけて。私達がずっと黙ってたから……」

「俺もごめん。言おうと思って結局後回しにしてた……」



 俯き加減に言う雪那と頼星は、とても申し訳なさそうに頭を下げる。芸能活動が始まったばかりで忙しかったからといって、理由も話さず、部活にほとんど参加しなかったのだ。いくら仲が良いとはいえ、あまりにも義理がない。

 なかなか頭を上げない二人に、メンバー達はしきりに「顔上げなよ!」と促す。恐る恐る従った雪那達に、温かい言葉のシャワーが降り注いだ。