思わず声を上げた私には無関心の甲斐先輩は、黙って満天の星を見つめていた。
 そんな優しい目をした甲斐先輩を見るのは初めてで、月明かりに照らされたその優しい表情はとてもきれいだった。
 まるで、この世のモノとは思えないくらい。
 このとき、私は思った。顔が良い人はやっぱり違うなっと!

「なんだよ…?せっかく連れてきてやったのに…。星は嫌いか…?」

 ぽつぽつと甲斐先輩は呟いた。もちろん、星やプラネタリウム的な天体観測みたいなものは嫌いではなかった私は、

「い、いえ…、先輩もそんな顔なさるんだなって思っただけです…」

 と、一様遠慮がちに言うと、

「まぁな…。俺、星は昔っから好きなんだ…」

 と、甲斐先輩は言ってきた。

「そうなんですか?」

 そう聞き返すと、

「誰にも言うなよ…、女々しいだろ…?」

 と、甲斐先輩はまた優しく笑った。
 高校にいる、普段の甲斐先輩とは全然違う雰囲気に、不思議と心ときめいた。
 苦手な先輩だったのになんで…?とも思ったけど、深くは考えないようにしてみた。その方が身のためだと何となく思ったのだった。

「なんだよ…?」

「い、いえ…」

 何も言い返せない。甲斐先輩にはやっぱり何も言い返せなかった。