春とも言い難い寒く冷たい風が頬を撫でる。人一倍寒がりな私は、毛糸のマフラーを離せずにいた。

(さむ…)

 そう思いながら顔をマフラーにうずめていると、

「よっ!」

 といつも通り、幼なじみの陽輝(はるき)が私の肩を叩く。

「…、元気だね」

 と、テンションも低い返答をすると、

「なんだよー、おめでたい日なのによー」

 と、テンションも高い返答が陽輝から返ってくる。
 陽輝が言っていたおめでたい日。それは、今日の入学式のことだった。二年生の私たちには関係のないことだけど、世の中にとってしてみたらおめでたい日に変わりはない。

「まぁいいや。お前はいつもそうだもんな♪また後でなぁ~」

 私とは学校が違う陽輝は、いつもこうして、私の学校まで遠回りして登校してくれている。私には昔から過保護だった陽輝のこの行動について、私は呆れてモノも言えずにいた。
 手を振る陽輝に、私は軽く手を振り返すと学校の門に入る。登下校は陽輝と過ごすこと。これが、今までの登下校。
 そして、玄関に行けばクラスが発表されていて、教室に行けば座席が発表されている。でも親しい人もいない私からしてみたら別にそんなことはどうでもよくて。強いて言うなら…