「俺には無理だぞ」

「あ~、だよね」

 向井 時弥(むかい ときや)は隣で眉を寄せる友人、八尾 杜斗(やお もりと)に薄笑いを返した。

 目の前には、山と貼られたお札の中心に穴の空いた岩がある。

 札に願いを書き、表と裏から穴を通って悪縁を切り良縁を結んで願いを書いた札を貼り付けるというものだ。

 ここは安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)──京都にある「縁切り寺」と呼ばれる神社だ。

 神社なのに寺と付いてるのは妙な感覚を覚える。

 縁切り寺という名は、あくまでも俗称なのだろう。