「今は、少し休め。そうしたら、また笑えるようになる。時間が必要なんだよ、傷を癒すのもな…」


そう、私には時間が必要なのかもしれない。
この痛みが、時と共に癒えますように………



「スイラン、もし、それでもお前が今の現実から逃げてぇって言うなら、俺は、お前を連れて一緒に逃げてやる」

「えっ………」



私は、レインの言葉に驚き、レインの顔を見つめた。
レインは優しく笑いかけてくる。


「俺は、お前だけの騎士だからな……」

「っ……レイン……」


また、泣き出す私の涙を、親指で何度も拭ってくれる。


「私に頑張れって言わないの?逃げて良いなんて、初めて言われたよ……」



私はこの血に縛られ、女王にならなければいけない運命、ヴァンパイアに狙われる運命から、逃げる事は許されなくて、絶対に出来ない事だった。




皆、耐えろとか、頑張ろうって言葉しかくれなかった。
逃げて良いなんて、そんな優しい言葉、かけられた事ないよ……


「もう充分だろ。スイラン、お前は自分の為に生きろ。幸せになったっていいだろ」



幸せに………?
自分の幸せなんて、考えた事無かった。