「クリス、あなただけはなんとかしてみせる……」
私は鎖骨を露にし、短剣を当てる。
「スイラン、止めろ!!」
レインは私の手を掴み止めた。
「やらせて、お願い………」
「!!」
私の泣きそうな顔を見たレインは、渋々その手を離した。
ごめんね、レイン………
それでも、私はクリスを助けたい。
「お願い、神様。どうか………」
ーピリッ
刃を滑らせると、鋭い痛みが走った。
鎖骨から血が流れ、私はそれを指で掬う。
「彼の傷を癒して……どうか、救って……」
「んっ……」
クリスの口に指を入れると、ゴクリと喉が動いた。
そして、私は祈るように両手を合わせる。
すると………
-パァァァァッ!!!
私の薔薇の刻印は光り出し、クリスの体をも包み込む。そして………
スゥゥッ……
「傷が……消えてくぞ……」
レインの言葉に、私の血の力が本物だったと思い知らされた。
「クリス……」
規則正しいクリスの呼吸に、私はホッと胸を撫で下ろす。それでも、悲しみはまだ残っていた。
助けられなかった命もここにはある。
「ディオナ………」
クリスをレインに預け、私はディオナを抱き起こす。
どうして、私の血は、ディオナを助けてくれなかったの?
「あなたともう一度話がしたいよ……」
また、涙が流れてしまう。
「スイラン王子!!」
すると、遠くから兵を引き連れたスヴェンが現れた。スヴェンの後ろには、拘束されているバルサ伯父様もいた。
その手には、弓が握られている。
まさか………
「バルサ伯父様、ディオナに矢を……?」
「余計な事を話そうとしたからだ!!この、使えない女め!!」
バルサ伯父様の言葉に、私は言葉を失った。
私は、何を信じればいいの……?
「スイラン王子、ディオナ様は……」
スヴェンの言葉に、私は無言で首を横に振った。
「そうか………」
スヴェンは私の頭を優しく撫で、ディオナの亡骸を抱き上げる。私はそこから動けなかった。
クリスとバルサ伯父様、ディオナの亡骸と共にスヴェン達は姿を消し、私とレインだけがここに残る。
ーポタンッ
頬になにかが落ちてきた。
それが雨だと気づいた時には、もう体はびしょ濡れになり、雨音だけしか聞こえなくなっていた。


