「父様は、母様を失った時の痛みを、また味わいたくないだけ!!だから、保守的な行動をとってる。私達は、今身内と争ってる場合じゃないの!!」


「スイラン……」


私だってそう。
その痛みを味わいたくないから、逃げたくなる。


でも、家族と争うなんて、本末転倒だよ。
母様なら、こんな事絶対に許さない。


ヴァンパイアとさえ、分かり合おうとしたんたから。


「言葉は心を交わす為にあるの。それをせずに諦めるのは、逃げだよ」

「スイラン、お前の言っている事こそ綺麗事だ。そうやって、アスラーナだって死んだのだろう!!」


父様も声を荒げ、立ち上がる。


あぁ、どうして分かり合えないの………?
血の繋がった家族なのに……


「母様の考えは正しい。その場しのぎの平和に意味はないもの。母様は真の平和の意味を知り、その方法を探して頑張っていたのに、父様はそれを否定するの!?」


「っ!!お前まで失うわけにはいかないのだ!!スイランを部屋へ連れていけ、外へは出すな!」


父様の言葉に兵が入ってくる。
そして、腕を強く捕まれ、部屋へと連れていかれる。


「待て!!俺が連れて行くから、その手を放せ!良いですか、ケナン王」


レインの言葉に、父様は一瞬息をのみ、ゆっくりと、静かに頷いた。