「ジルド、君が連れてきてくれたのですか?」


この人、全てわかっていて、ジルドに聞いてるんだ。今、ジルドは裏切り者になってしまってるし……ジルドが危ない。



「僕は姫の見せる希望を見てみたくなったんだ。だから、あなたに付くのはもうやめたよ」


軽い調子でそう伝え、ジルドは私の手をとった。


「ジルド、君は私の情けを忘れましたか」

「情けなんて、惨めなだけって気づいたんだよ」


二人は終始笑顔なのに空気は凍りついている。



「全く、薔薇の姫はくだらない夢物語を語るのが好きらしい」


ヴラドはそこで初めて、王座から立ち上がった。


「それは、先代の母様の言葉を覚えていたってこと?」


私は、恐怖で今にも崩れ落ちそうな体にムチを打つように、ヴラドに向き合う。


「フフッ、私は食糧に情は映しませんよ」

「………………」


笑ってる………なのに、どうして、こんなに冷たい笑いかたしかできないんだろう。