「ジルド、お前………」


センリさんは、ジルドの前に立ち、爪をつきつける。それに、レインも剣をぬこうとしたが、ジルドが手で制した。


「僕たちは、力を得た今も、ヴラド様という権力の下に人を傷つける残酷な運命しか歩めなかった」


「犠牲はつきものだ!!それは、お前だって分かってるはずだろ!!」


センリの言葉に、ジルドは首を横に振る。


「犠牲を当たり前だと思う僕たちは、権力者となんら代わりないことを人にしてきたんだよ」

「それは…………」


「センリ、僕は変わりたい。それで、センリにも、変わってほしいんだ。どんな形でも幸せになれないなら、辛くても、可能性にかけたいんだよ」


ジルドは迷いなく、センリを見つめた。それを見て、センリは深くため息をついた。



「お前は俺の希望だ。だから、人であった時も、ヴァンパイアになっても、これまで、生きてこれたんだ。だから俺は、お前が進む道をどこまでも着いていくって決めている」


「ははっ!センリってば、俺の事好きすぎ♪」


「馬鹿か、さっさと行け」


センリは背を向け、歩き出す。


「戦場のヴァンパイアは、俺が残らず狩ってやる」



それが、センリさんなりのケジメなのだと思った。



「僕に掴まって、ヴラドのとこまで飛ぶよ」

「へぇ、ヴァンパイアって便利な超能力もってんだな」


しみじみと呟くレインに、ジルドは不敵に笑う。


「人とは出来が違うんだよーだ!」

「あぁ??元人だろ、ガキ!!」


「童顔なだけだよーだ!!!」


二人のじゃれあいが、今の私には何よりも嬉しかった。願っていた未来の片鱗だから。



「いこう、ヴラドの所へ!」


私の言葉に、二人は頷く。そして、私たちはヴラドの元へと向かうのだった。