「あなた達は、お互いに民を守りたいといいながら、民を傷つけている。それに気づいて」

「私は………傷つけぬよう、ヴァンパイアの言う通りにしたが、一度言いなりになれば、長く民を傷つけるのに、気づかなかった…」


先に、シルヴィエ様は答えを見つけたようだった。



「俺は……戦いに傷ついた民をまた戦いに投じ、そのダートの民の希望のシルヴィエを殺そうと……」


ガウェイン様も、一つの答えにたどり着き、斧を弱々しく下げた。



「その時、正しいと思って決断したことに、責任があることを忘れないで。そして、その結果、過ちをおかしたのだとしても、解り合う事を忘れないで」


私は、ガウェイン様とシルヴィエ様の手を繋いだ。


「今は、あなた達の力を合わせて。やるべき事は分かるね?」


「私は……」 「俺は…」


二人が視線を交わし、頷いた。


「「ダート城へ、ヴァンパイアから民を救う」」


二人の領主が心を交わした瞬間だった。私も、ホッとして息をはく。



「無茶苦茶だな、スイラン」


近寄ってきたレインは苦笑いを浮かべた。


「はは、そうかな??」


私は、笑顔を返して、燃える大地を見つめる。



「赤い…………」


全てを奪う赤だ………。そう、母様を殺したあの純血のヴァンパイアの瞳と同じ……


「奪わせねぇ、その為に決めたんだ」


ふと、レインが呟く。横を見ると、レインは真っ直ぐに炎を見つめたままだった。



「レイン………」


今、何を考えてるのか、なんとなくわかった気がした。



昔、まだ戦う力のないレインの前で奪われた命に思いを馳せてるんだろう。



「もう、ただ泣くだけの私たちじゃない。そして、一人じゃない」


私は、レインの手を握った。炎を見つめていたレインが、私の方を向く。