そう、この先にいるのは………ダート領地領主、シルヴィエ様。
「スイラン王子…………」
声を震わせ、まるで泣き出す前の子供のようにその顔がくしゃくしゃに歪んだ。
あぁ、領主ゆえに辛い決断をせざる負えなかったんだ。
「ダート領主、シルヴィエ・ダート様」
私は、剣を抜き去り、その剣先をシルヴィエ様に向ける。それを見ていた兵達は動揺しているようにみえた。
それでも、今はこれが必要。彼の心を守るためにも。
「スイラン王子、私は、もう取り返しのつかない罪を犯しました。薔薇を潤す、水の象徴…城に注ぐ優しい領主になれと言ってくださったあなたの母上様にも、顔向けできません……」
女王の祝福をうけたシルヴィエは、きっと、自分をすごく責めている。
あなたが悪いわけじゃないと言っても、納得しないんだ。この人は、優しすぎるから……


