「城には、私の妻も、子どももいます!!私だけではないのです。他の兵も………」
「うぅ、エミリー……」
誰かが、城にいるであろう大切な人の名前を呼んだ。皆が、涙を流している。
それが、私の心を奮い立たせるのに時間はかからなかった。
許せない。
私の大切な民を傷つけるなんて…………
この人たちの傷みは、どれほどのもの?それは、もう図り知り得ないものだ。
「ちゃんと、守りきることができなくて、申し訳ありませんでした。僕は、君たちをここまで追い詰めてしまったんだね」
私は彼を抱き締めながら、頭を下げる。それに、一同が息をのんだのがわかった。
「だからこそ、皆、力を貸してほしい。ダート領地へ向かい、ダート城にいるヴァンパイアから大切な者を救うんだ!」
私は立ち上がり、ダート兵の中を歩いていく。
「おい!スイラン!!」
レインが、不安そうに私の名前を呼んだ。それに、振り返って笑顔を返す。
信じて、そう心のなかで呟いた。
すると、伝わったのか、レインは渋々頷いた。それを見届けて、私は足を進める。
皆が道をあけるように両端によけ、膝をつき、頭を垂れた。


