深紅の花に姫君《改装版》



「お前と一緒にいてやっと分かった事だ。だから、お前が闇に捕らわれそうになった時は、俺が引っ張り出してやる」


レインはそう言うと、いつものような優しく不敵な笑みを私に向けた。


その笑顔に、少しだけ泣きそうになった。それでも、レインに笑顔を見せたくて、私は精一杯笑顔を浮かべた。


「時々、私は深く、暗い水底に沈んでいくような事があるんだけど……」



それは、まるで私が抱く、『本当』の気持ちの数々が、海のように大きな水溜まりになり、私はその中で気づくんだ。



私は綺麗事ばかりを口にして、『本当』を誰にも見せない。そう、王子という外見だけでなく、心すら、私は偽っているんだと実感させられた。



それが、レインの言う私の闇なのかもしれない。でも、私がその闇に捕らわれた時、必ず救い出してくれる手が現れた。



「…レインは、私をいつも闇から掬い上げてくれる。その、口から溢れる一つ一つの言葉に、私は…悩んでたのが嘘みたいに、簡単に笑顔になれるんだよ」



私は地面に膝をついた状態で、レインに右手を差し出す。



「当たり前だ」


レインは不敵に笑い、私の手を掴むと、力強く引き上げてくれた。


「そんで、こいつらはどうしてここに居やがんだ」


レインは、ダート兵に混じってアフィカ兵を襲う、ヴァンパィアに目を向ける。


「状況が分からないけど……このままでは、アフィカ兵の方が不利。まずはヴァンパィアをどうにかしなければ…」


私はスヴェンに目を向ける。