「だったら………」
ここで死んでしまえたら、もう、自分の存在の価値なんかに悩まずに、これから来る運命に嘆かずに済むのかな。
自分の危機だっていうのに、私はその爪をただ無抵抗に見つめていた。
ーバッ!!!
するとそこに、また大きな影が映った。
「とらせねぇよ!!化け物が!!!」
ーガキーンッ!!!
その声で、私の見た影がレインだった事に気づく。レインは、剣でヴァンパィアの爪を弾いていた。
「コイツの、髪一本すら、テメェ等にはやらねぇ!!傷なんて付けてみろ、一発でなんて殺してやらねぇ。この剣が、使い物にならなくなるまで、テメェを切り裂いてやる」
私の前に立つレインの背中から、尋常じゃない殺気が放たれていた。
「スイラン」
すると、レインは少しだけ私を振り返り、見つめる。その瞳に戦火の炎が揺らめき、私は場違いにも綺麗だと思った。
「スイラン、聞け」
「あっ……うん」
私は、我に返り、レインを見上げる。
「お前は、俺のモンだ。お前を傷つける奴は、お前自身であっても許さねぇぞ。簡単に、その命諦めるな」
「!!!」
レインは…私の気持ちに気づいて……?
まるで、見透かされたような言葉に、私は目を見開く。
「お前は、光のように誰かを導く強さを持っている。だけどな、たまに、ふと闇に捕らわれる」
「レイン………」
「それは、お前が光で在ろうとする為に、その心の闇を必死に抑え込んでるからなんだろう」
何でだろう………
具体的に言われたわけでは無いのに、私の胸は、煩いくらいに騒いでいた。


