「憎しみに生きても、母様は喜ばないから…」


憎しみを何処かで許さなければ、ヴァンパイアも人も手を取り合い生きる世界なんて作れない。

何より、母様が望んだ未来でもある。


「この辛い気持ちも、全てを越えて皆が共に支えあって生きていく可能性を信じてる。だからね……私は母様に恥じないように生きるって決めたの」


悲しみは永遠に消えないけれど、それ以上にこの世界には喜びが溢れてる。


「………強いんだね、スイラン。僕には持てなかった強さを君はもってるんだ」


ジルドは私に小指を差し出す。


「君が本当に運命を変える姫なら、僕に見せてよ。希望をさ」


「えぇ、約束する」


私はその小指に自身の小指を絡ませた。


ヴァンパイアと人の間で交わした約束。
絶対に違えないように、守らなきゃ。


ジルド達ヴァンパイアの希望を守る為に。


「ばいばい、スイラン。今度会う時が、戦場じゃない事を祈るよ……」


そしてスッと夜空に溶けるようにジルドは姿を消した。
私はジルドが消えた夜空を見上げる。


私は、私のやるべき事をしよう。
私の残された時間は、この国の未来の為に。



そう心に決め、瞬く星々に誓った。