「世界を変えるなんて、簡単に言うけど、確証の無い口先だけの言葉なら、僕は信じない」


「薔薇の姫には、運命を変える力があるの」

「運命を変える力?」


ジルドは怪訝そうに私を見つめた。


「うん。あなた達を人へと戻し、力の格差を無くすの。もう一度、人としてこの世界で生きて?希望を捨てないで」


「………人に戻れるなんて、ありえない。そんな夢物語…」


私だって、ついこの間まで知らなかったよ。
私の血に、世界を変える力があっただなんて…



「それに、人に戻れたとしても、格差は無くならない。権力を持った人間が何も持たない人間を虐げるんだ」


「そうだね。虐げる権力者を生まないために、民も政治に加わるの。誰もが意見を言える国にする。これはまだ理想だけど、絶対に叶えると約束するわ」


私は真剣な瞳でジルドを見つめる。


この言葉で、この人の心を動かせなければ、また戦争が起こってしまう。


どうか、人の言葉に力があるのなら、心に届いて。



「すごい自信だね、なんの信憑性もないけど」

「………っ……」


確かに、夢物語かもしれない。
私は、信じてとしか言えないから………



「でも、姫のその言葉、信じてみるのも面白そうだ」


ジルドは笑い、私からスッと離れた。
そして、夜空へと浮く。


「ただ、ヴラドはヴァンパイアを収集し、アルバンテールを襲うみたいだ。僕には止められない、あの人の力は強力だからね」


「ヴラド……純血種のヴァンパイアがアルバンテールを攻めてくるの!?」


だとしたら………
民達を逃がさなければ。
そんな、争いは止められないの………?


「目的はもちろん君だよ、姫」

「………この血が欲しいのね。母様の時のように……」


まって………
長髪の紅い瞳のヴァンパイアって、まさか母様を殺した純血種……?


「母親を殺されたの?」

「そう。純血種のヴァンパイアに………」


あの紅くて冷たい瞳を今でも覚えてる。
一握りで命を奪う事の出来る強い脅威。


「純血種……ならそれは、ヴラドだよ。純血種はヴァンパイアの始祖にして、たった一人しか存在しないからね」


「そのヴラドが母様を…………」


「なのに君は許せるの?大切な人を奪ったヴァンパイアを」



ジルドの問いは、私を試すようなものだった。