「失ったモノへの悲しみ?僕はそんなモノに執着するほど弱くない!!なんせ、ヴァンパイアになって力も手に入れたんだからね!」


グイッと私の手首を掴み、地面に押し付けられる。
手首が痛んだけれど、それ以上に辛かった。



やっぱり、この争いばかりの世界が悲しみを生んでる。私達は、ジルド達のような運命を呪い、嘆く人達を守らなくてはいけなかったんだ。


「ジルド、どんなに強い力を手に入れても、私達は同じ人だよ」


「君達人間とは違う!!」


「どちらかを滅ぼした所で、今度は同族同士で争いが生まれる。ねぇ、あなたは人を全て滅ぼした後、今度は誰に復讐をするの?」


尽きない憎しみに、終わらない復讐に永遠に苦しむのは自分自身だ。


「それはっ…………」


余裕が消えたジルドに、私は笑みを浮かべた。


「人を傷つけて、本当にジルドは平気だった?誰かを傷つける度に、苦しくなかった?」


本当は、傷つけた方も傷ついてる。
痛みは、与えた分だけ返ってくるんだ。



「………もう、今さらだよ。そうだとしても、僕は人を傷つけずには生きられない」


その、言葉に私は安心させるようにジルドの頭を撫でた。


「何をっ………」


驚きに体を離そうとするジルドに私は叫んだ。


「怖がらないで!!私をちゃんと知ろうとして!私は、あなたを傷つけない」


言い聞かせるように言うと、ジルドはゆっくりと逃げるのをやめて私に頭を撫でられ続けた。



「……どうして……………」

「大丈夫、私が絶対にあなたも皆がもう一度自分の運命に失望しないように、世界を変えるから!」


この力で、沢山の人達の希望を繋ぐ。
それが、私のするべき事。