「なんの価値もない人生で、塵くずとして散る…それでよろしいのですか」
なんの価値もないまま………?
僕の人生は、なんの価値もないのか。
ただ奪われ、そして虚ろに生きる時間は無駄だったのか…
考えれば、それは理不尽な事のように思えた。
「僕は……奪われたまま………死ぬのか……」
許せない。
僕から大切なモノを奪った奴等を………
「ジルド………」
センリの悲しげな声が聞こえる。
僕に残ったのはセンリだけ。
そのセンリすら、僕は奪われるのか……
そんな運命、僕は望んでなかった。
誰もが普通に手に入れる幸せを、なぜ僕たちだけが奪われなきゃならない。
「この手に力があれば………」
何も失わずにすんだ?
悪い奴も倒す事ができた?
「力が欲しいですか?」
ヴラドの声が、頭の中に響き渡る。
「欲しいと言ったら……くれるの?」
僕は初めて、虚ろな瞳に光を宿した。
真っ直ぐに、ヴラドというヴァンパイアを見上げる。
「その代わり、あなた達は同族を喰らう側になります。そして、衝動に抗えず血を啜る化け物となる。その覚悟は出来ていますか?」
ニタリと笑うヴラドに僕は笑った。
ヴァンパイアである自分を化け物というヴラド。
そうか、僕も目の前のヴァンパイアになるのか。
それでも、僕は力を手に出来る。
人間は腐っているし、僕たちを苦しめた人間を殺せるなら、それでもいい。
「あぁ、僕は塵でなんか終わりたくない。化け物にでも何でもなるさ」
僕はヴラドに手を伸ばした。
これが例え、悪魔の誘いであったとしても………
僕は喜んで受けよう。
「ジルド、お前…………」
「センリ、君も一緒に。僕たちに、価値無い運命を与えた人間に報復する為に」
僕の言葉に、センリの瞳にも光が宿った。
僕達は見つめ合い手を取り合う。
土に汚れ、かさついたその手に触れる。
「では、あなた達に新しい運命をあげましょう」
そうしてヴラドは僕たちをヴァンパイアへと変えた。
僕達の、選びとった運命だ。


