「例えばどこが違うの?」
「僕達は血を好む。吸血には底無しの欲求と衝動があるからね」
そう、ヴァンパイア特有の吸血衝動。
それは確かに人間には無いけれど……
「人間も、誰かを傷つけ、富や権力を求めてその身勝手な理由で人を傷つける、欲深い生き物だよ」
それが血か富か、対象の違いにすぎない。
本質は同じだ。
「私達は同じ、考え、何かを手にいれたいという欲を持ち、言葉を交わし相手を知ろうともできる。私達は解り合えるわ」
解り合おうとする気持ちを互いに忘れなければ、私達は手をとりあえる。
「私はね、その可能性を信じてるの」
「何とも頼りない可能性だね。僕は確信の無いものは信じないんだ。現実主義だからね」
「…………なら、現実になってるよ。今、こうして私達が言葉を交わしてるじゃない」
これが何よりも証明してる。
私達は解り合えるって。
「何で?君は何度も僕達ヴァンパイアに狙われて来たでしょ?君の血は僕たちには最高の餌だから。なのにどうして…」
「言ったでしょ?私はこの世界の可能性を信じてるって。人とヴァンパイア達が共に生きる未来の可能性を」
そしていつか、時間はかかっても、争いが無い世界になってほしい。意見の衝突や、思想の食い違いがあっても、話し合いで解決できるように、皆の考え方が変わればいい。
「だけど、僕達は血を飲まなければ生きていけない。この内にある残酷な衝動は、簡単に我慢できるようなものじゃないんだ」
初めて、ヴァンパイアの辛そうな顔を見た。
苦しげに顔を歪めるヴァンパイアの頬に、私は手を伸ばす。
そうか、傷つけるなんて、誰も好んでしたりしない。
きっと、たくさん苦しんだんだ。
「人を傷つけるのが、辛かったんだね……」
「!!」
ヴァンパイアは驚きに目を見開く。
「そんな顔をするくらい、あなたは傷ついてきたんだね。それなのに、私はヴァンパイアの事を知ろうともしなかった」
今まで、母様殺されたという被害者のつもりだった。
ヴァンパイアを憎んで、憎んでいる間は悲しみを少し忘れられたから……
「………ねぇ、あなたの事を教えて?私は、もっとあなた達を理解したい」
「スイラン………君って……」
ヴァンパイアは、しばらく黙りこみ、盛大にため息をついた。
「君には負けるよ、きっと後悔する。僕たちの事なんか知ったって、僕達は対立するしか道はないんだから…」
「でも」とヴァンパイアは小さく笑った。
初めて、この人の本当の笑みを見た。
「君が聞きたいなら話してあげる。ヴァンパイアになった時の話さ…」
そして、ヴァンパイアはポツリポツリと話し出した。
ヴァンパイアになるまでの壮絶な話を。


