深紅の花に姫君《改装版》



「おじいさん、怪我人はどこですか?」


私は決意を決めて、老人に向き直る。


「あの………?」


老人は怪訝そうに私を見て首を傾げた。


「私に、出来る事をしたいんです。アルバンテールの姫、スイラン・アルバンテールとして!」

「なんじゃって………!!」


驚きに目を見開く老人の手を私は両手で包み込んだ。


なんて傷だらけな手なの………


「お嬢さん…いいえ、姫様の手が汚れてしまいます…」

「いいえ。あなたの手は汚れてなんてない。生きようとする、美しい手だと私は思うの」


見える傷だけじゃない、見えない心の傷も負って……


「たくさん傷ついてしまったけれど、いつか傷は癒え、人に強さを教えてくれる」



この寂れ、枯れた大地を、もう一度潤す事が出来れば……



「希望を捨てないで。もう一度、夢を持つの」


「ですが、わし等にはもう何も………」



項垂れる老人に私は笑いかける。


「あなた達がいるじゃない。大地が枯れ果てても、命あるモノがそこにあるのなら、また生み出す事が出来るわ」



生きてさえいれば、悲しみも、きっといつか思い出という強さに変わる。