深紅の花に姫君《改装版》



「でもっ………」

「ダメだ、下がってろ」


村人から見えないように、レインの背に庇われる。


「早くここを離れた方がいい…いや、国を離れるんじゃ。いづれ王都も火の海じゃからな……」


生きる希望を失った暗い瞳が、私達を見る。


ヴァンパイアは、ついに本格的に攻め始めたんだ。
じわじわと、アルバンテールへ向かいながら……



「あの、あなたはどうしてここに?」


どうして危ないと知りながら、ここに残ってるの??
早く逃げなければ、この人も……


「ここには、妻や息子、孫が眠ってるんじゃ……離れられんよ」

「!!」


そんなっ………じゃあ、生き残ったのはこのおじいさんだけなの………?


たった一人で、亡骸と一緒に……


「もう、わしには何も残っとらん……」


涙も枯れたようだった。
ただ、虚ろに見つめる瞳に、私は苦しくなった。



こんな被害者がこれからどんどん出るんだ……
そして、私はそれを救えるのに、見捨てる。


「これが……私の背負う罪なの………?」


ねぇ、私はこれでいいの?
自分の幸せと引き換えに、誰かの絶望を生んで……



………それで私は本当に幸せなの?


「スイラン……だから嫌だったんだ、ここに入るのは…」


レインは辛そうに私の頬に手を伸ばした。


「そうやって、傷つくって分かってたからな…」



頬を撫でられ、私は泣きたくなった。



レイン、きっと私だけじゃないんだよね。
レインも、何もせずに幸せになろうとする自分の傲慢さに傷ついてる。



だって………


私もレインの頬に手を伸ばし触れた。


「レインだって辛そう………」


そんな苦しそうな顔をして、私達は幸せになんかなれない。答えなんて、本当は決まってたのかもしれない。