無表情の先輩の視線が、宙でゆらゆらと揺れた。
その視線が定まるのを、ボクはただ、じっと待つ。


「……今!」

と、唐突に、彼は口を開いた。


掴まれた手が、熱い。
絡んだ視線から、逃げられない。


「今……、聞きたい」


……もう、まだだって言ったのに。

そんな風に縋るような目をされたら。
優しく髪に触れられたら――。


「仕方ないな……。一回、だけですよ」


少しだけ背伸びをして、ボクは先輩の耳元に口を寄せた。










――先輩……大好きです――










*END*