「似合ってます」

そう言って笑ったら、片手に覆われて半分隠れた彼の顔が少しだけ赤くなった。


「運転するときだけ……、ちょっと視力が足りなくて」

その、まるで言い訳するような言葉が可笑しくて、小さく声に出して笑ってしまった。


3月20日、水曜日――春分の日。


前から約束していた、お花見ドライブだ。
空は青く風も穏やかな、心地好い一日の始まり。


ボクと先輩の、【初デート】
……なんて。

カァッと自分の顔が熱を帯びたのに気付いて、慌ててその考えをしまい込んだ。


「――行こうか」

と、先輩が助手席側のドアを開けてくれた。

「はい!」