【完結】bitter step！

梶原は何やら目を細め、うんうんと頷いた。

「岸本は、オレに１日遅れのチョコレートを渡すためにわざわざ１人でやって来た、と……」

「違うし」

瞬殺。
コイツ、ふざけているのかただの馬鹿なのか。


「ははっ！　分かってるよ。意外と優しーのな、お前」

はあ？
何をもって『優しい』なんて言葉が出てきたのか、真意を量りかねて首を傾げた。


「３人も来るって聞いてたのに誰も来なかったら、オレっちここで独りぼっちじゃーん！　オレのこと気にして１人で来てくれたんだろ？」

くしゃりと顔を崩して笑うチビ猿に、ちげーよアホ、と言ってやるのは簡単だったけれど、ボクはそうしなかった。

せっかくのその笑顔に水差したくないと思ったのは、ほんの少しだけ。
梶原が全て見透かした上でそう言っているような気が、なんとなくしたから。