【完結】bitter step!

すがすがしい陽気とは裏腹に、足取りは自然と重くなった。

このペースじゃ、待ち合わせに遅刻するかも。
そう思っても、なかなか足は前に出なかった。

慣れないマスク越しの呼吸は、少し息苦しい。


2分ほど遅れて辿り着いたいつもの場所に、2人はちゃんと待っていた。


「――遅えぞ、なお」

「おはよう。……風邪?」

2分の遅れを指摘する純平と、ボクのマスクを気にかけた美紗。
いつもと変わらない朝のような挨拶だった。


重い瞼のせいで勝手に細まる目を伏せたまま、2人の顔を見ることも出来ずにボクはこもった声を出す。

「おはよ。……花粉症」


言い切っても、所詮すぐバレる嘘だ。
さらに小さな声で、ボクは

「みたい」

と付け足した。