「そんな目で見ないの。あれだけ大声で泣いてりゃ聞こえるわよ」

と大げさなため息を吐き出す母に、反論の言葉もない。

……恥ずい。
てか、それなら昨日の内にもっと心配しろよ。
様子見に来るとか――、いや、あそこに入って来られても困るか。


「とりあえず、目玉よーく洗いなさい。タオル冷やしておいてあげるから、学校行く前に少しでも当てて」

「そんなんで治るの?」

「そんなすぐに治らないわよ。ちょっとマシになる程度よ」

マシって。
せめてボクだと判別できる程度に復活したいんですけど。


とりあえず言われた通りにバシャバシャ顔を洗い、水の中で目も開いた。
眼球を上下左右に動かしたり瞬きを繰り返して洗っていくけど、どれだけ繰り返しても、瞼の重みも目頭と目尻に残る異物感も消えなかった。

それが一晩で固まってしまった涙の成分なのか腫れのせいなのかは、よく分からない。