【完結】bitter step!

「純平、コート」

「ああ。……サンキュ」


コートを受け取って着る時も、彼は足を止めなかった。
歩幅の広い純平が、いつもより少し早足で進み続ける。

遅れを取らないようにと必死で足を動かし続けながら、ボクも自分のコートを羽織った。


どんなに急いでも縮まることのない、約1メートルの距離。
彼は歩くスピードを合わせてくれなかったし、ボクはそれ以上詰める勇気がなかった。


「……美紗は?」

「……早退、したみたい」


そう、と、純平が小さく相槌を打った気がした。
それを最後に、会話が途絶えた。