【完結】bitter step!

階段を駆け上る。
不意に視界に影が差し、上から降りてくる人の存在に気付いた。


顔を上げた、そこに――、

「おう、帰るぞ」

純平は、いた。


ボクに声を、かけてきたのに。
目は、合わせてくれなかった。

「帰るぞ」と言いながら、足を止めることなく、ボクの隣を通り過ぎた。


無意識に噛みしめた唇が痛んだ。

必要なのは【時間】で、1時間やそこらじゃ、全然足りない。
分かっていた、はずなのに。


でも、それでも――、純平は、いた。
ボクから、逃げなかった。