「ただの嫉妬や独占欲じゃない。嫌われて当然のことを、私がしてきたのよ」


オモイダシテハ イケナイ。


あの夜タイヤの公園で不意に開いた記憶の倉庫の鍵を、ボクは、閉め忘れたのだ。

きわどい状態でぶら下がってかろうじて扉が開くのを制止していた南京錠は、頭を割るほどに大きくなった鐘の音に反応して振動する。
ゆらり、ゆらり、左右に大きく振れたそれが、ついにゆっくりと、下に落ちた。


そして倉庫の中身が、抑止力を失った扉を容易に押し開けて外に飛び出した。


そろそろ時間ね、と、美紗が立ち上がる。

「ここの片づけ、お願いしてもいいかしら。私、先に戻りたいの。――なお、ちょっとだけ付き合ってもらえる?」


その言葉に抗う気持ちは起こらなかった。