【完結】bitter step!

「チョコチップクッキーだ」

最初に声を出したのは響先輩だった。

そう言えば彼はずっと『チョコレート』と言っていた。
ボクが何を作るか知っていたのは美紗だけだから、当然なんだけど。

小さい声で彼は「だからか」と付け足した。


「だからって?」

すかさず純平が突っ込むと、先輩にとってはそれが独り言だったためか、「あ、いや」と言いよどむ。

「なおが、言ってたから。チョコとクッキーは間に合ってるって」


……一瞬、何のことか分からなかった。
よくよく考えるとそれは、先輩が九州のお土産についてメールをしてきた時の話だった。


「よく覚えてましたね、そんなこと」


驚いてそう言うと、何故か美紗が、つまらなそうな顔をした。