「会長がきっかけをくれたので、私は自分の気持ちに正直になることに決めました」

喋りながらも手を止めない彼女は、弁当箱を綺麗に包んでいった。

こんな時なのに美紗の言葉の意味より、その器用な指先に意識が行ってしまう。


ううん、ボクは――、決定的な言葉を、聞きたくないだけなんだ、きっと。


「……僕は君に、何かしたかな」

「いいえ、特に何も」

首を傾げる先輩に、美紗は微笑んだ。


「でも、私の背中を押したのはあなたの言葉です」

「それは……、光栄だね。とでも、言っておこうかな」


何かを理解したように、響先輩は笑い返した。