【完結】bitter step!

美紗だけは馬鹿げた特大オムライスとケチャップの文字には触れることなく、

「ババアなんて言っちゃダメよ、なお」

と、ごもっともなお説教をくれる。


でも、つい出ちゃう時だってあるでしょ。
特にこんな、おかしな悪戯された時には。

……なんて、言い訳は無用。
口ごたえしたら、余計に斬られるだけだ。


「母さん、きっとバレンタインのスペル知らないんだな」

気を取り直してそう言ったら、皆が笑ってくれた。


ボクだけが感じていたのか、それぞれが感じていたのかは分からないけど、そこにあった何か張りつめた空気は、母の悪戯のおかげで払拭された。

何を思ってこんな弁当をこしらえたのかは知らないが、恐らくは母の想定外の方向で、この弁当は役に立ったワケだ。

うん、我が親ながら、やはりなかなかのやり手である。