【完結】bitter step!

「こんにちは、会長」

「やあ、来たね」

先に入った美紗が声をかけると、中にいたその人もいつもの通りに笑う。


いつも通りのふわりと優しい微笑み、なのに――、
窓から入る陽に透き通った髪のせいか、触れたら消えてしまいそうな儚さを一瞬だけ感じる。

そうだ、思い出した。
この人とここで会うのは、今日が最後なんだった。


「こん、にちは」

口走った壊れたロボットのような挨拶は、取り戻そうにも戻ってこなかった(当然だ)。


響先輩の視線がボクの手の紙袋へ移動し、彼の表情がくしゃっと子供っぽく崩れる。
……くすぐったい。