バレンタイン問題が与える影響が、明日の【本番】(作る日って意味での)だけでは済まないような予感を、ボクは薄々感じている。


それはボクのチョコチップクッキーを『楽しみにしている』響先輩のせいであり、『一番大切な人にだけ』チョコをあげると宣言した美紗のせいであり、恐らくはその美紗からのチョコを独り占めするであろう純平のせいであり。


そしてなりより、この【女の子の】イベントに初参加する、自分自身の気持ちのせいであり。


ボクの(そして純平の)動揺など我関せずといった様子で、美紗は分かれ道にさしかかると

「じゃあ、また明日」

と爽やかに別れを告げて暗がりに消えていった。