「大変、です……ね」

『うん、まあ……、自分で選んだ道だしね』


それでもそう言い切れる先輩は、ボクより1つ年上なだけなのに凄く大人に感じた。

もう一度空港のアナウンスが聞こえると、『ごめん、もう行かなきゃ』と少し慌てたように先輩が言った。


『なお』

聞きなれてきた耳に優しい声が、ボクの名前を呼ぶ。


『電話、ありがとう』

「――……博多銘菓、楽しみにしてます」


結局ボクは、気の利いたことを何ひとつ言えなかった。