「もちろんです! 良かった、捨てるんだったら処理が面倒だろうなって思ってたから」

即座に答える。
本当は要らないと言われれば持ち帰ろうかと思っていたくらい、繊細な装飾が浮き上がった揃いの器は可愛らしかった。
気に入って使ってもらえるのなら嬉しい。


「まさか。捨てないわよ勿体ない」

と笑った玲奈の母に、

「次にお邪魔する時は、この器でおばさんの手作りプリンが食べたいな」

と注文した。
少し図々しいかとも思ったが、相手は嬉しそうだ。

「ふふ、作るわ。またいつでも来てね」

玲奈の母はそれから少し声を落とし、みのりにだけ聞こえるように「玲奈がいなくても」と悪戯っこのような目配せで付け足した。


ふわりとした微笑みに、みのりも笑い返す。
はい、との返事は、口にしなかった。

またここを訪れることはあるだろう。
けれど『いつ』とは約束出来ない。
それも恐らくかなり先になるだろうこと、そう簡単には足を運べなくなるだろうことは予想がついていた。


「楽しみにしてます」

それだけ残して、みのりは急かす2人に続いてリビングを後にした。