【完結】遺族の強い希望により

みんなにからかわれて、もう、とみのりは頬を膨らませて見せた。

「こ、この前は手土産ってつもりじゃなくて……」

尻すぼみに小さくなるみのりの声は、笑いの余韻にかき消された。


前に訪れた時はただ、玲奈を元気づけようと思っただけだった。
思えば玲奈の母の分までは気がまわっていなかったし、きちんとした挨拶も出来ていなかった。

今日はちゃんとした大人のように振る舞いたかったのだ。
この短い期間に、そういう心境の変化がみのりには起こっていた。


――まあ、いっか。

笑われてどうにもきちんとした大人のようには締まらないが、それでも気分は悪くなかった。
初めから完璧を目指す必要などない。
大人のマナーや作法は、これから少しずつ身に着けて行けば良い。

どの顔も笑顔だ。
1人、亮の顔だけは痛々しい派手な装飾のおまけつきだが。