――ああ、私が君たちを家族を欠いた人にしてしまったのだと思うと、悔しくて堪らない。だがどうか、悲しみには暮れないで欲しい。無事に天国へ行けるのか、それともこんな風に家族を苦しめる死に方をした私は地獄に落ちるのか分からないが、例えどこへ行くことになっても必ず私は君たちを見守っている。いつまでもずっとだ――
手紙の終盤になると、僅かだが筆跡が乱れた。
彼がいつどんな状況でこれを綴ったのかは分からない。
だがその時とても感情的になっていただろうことだけは明らかだった。
――愛しい妻と娘へ。ありがとう。愛している。幸せであれ――
「……お母さん」
「ん? なあに?」
「蜂蜜レモン、飲もうかな」
玲奈がもぞもぞと動くと、母は漸く腕を緩めた。
温もりが離れても、もう淋しいとは思わなかった。
「冷めちゃったわよ」と母が苦笑する。
「ぬるめで飲みやすいわ」
優しい酸味が、泣いて乾いた身体に染み込むように喉を潤していった。
手紙の終盤になると、僅かだが筆跡が乱れた。
彼がいつどんな状況でこれを綴ったのかは分からない。
だがその時とても感情的になっていただろうことだけは明らかだった。
――愛しい妻と娘へ。ありがとう。愛している。幸せであれ――
「……お母さん」
「ん? なあに?」
「蜂蜜レモン、飲もうかな」
玲奈がもぞもぞと動くと、母は漸く腕を緩めた。
温もりが離れても、もう淋しいとは思わなかった。
「冷めちゃったわよ」と母が苦笑する。
「ぬるめで飲みやすいわ」
優しい酸味が、泣いて乾いた身体に染み込むように喉を潤していった。


