【完結】遺族の強い希望により

――これを読んでいるということは、私は恐らくもう死んでいるのだろう。異国で別の家族(気分が悪いだろうが、敢えて家族と呼ばせて欲しい)と過ごしている間に逝くなんて、君たちを裏切るような死に方になってしまったようだ――


手紙の中で、父はそれを何度も詫びていた。
まだ生きている内に綴っている手紙だ。
そんな事態にならないよう、彼がいつも向こうにいる間、細心の注意を払っていただろうことが想像出来た。


にも拘らず危険を冒して海に飛び込んだ父は勇敢で、そしてやはり、正義の人なのだ。
自分が信じる正しいと思う行いを貫くことが出来る、強くて優しい人なのだ。

溺れているのが自分の孫だろうとその振りをした赤の他人だろうと関係ない。
大して泳ぎが得意なわけでもないのに、危険を顧みず命を張って助けに行くことの出来る人なのだ。


「――誇らしいと、思いましょう」

「……そうだよね」

称えられるべき人だ。
そんな父を持ったことを誇らしいと、胸を張っていれば良い。