【完結】遺族の強い希望により

――必要なものが欠けた家族というのはどこか淋しいものだ。親族を喪ったり離別した人たちを何人も知っている。皆その淋しさを他の何かで埋めながら笑って生きている。だがエラは少し違った。産まれついた時から他の誰もが当たり前に持っている父という存在を欠いていた彼女の穴は、他の何にも埋められていなかった――


それがただの同情なのか、それとも最初に会った時には自分の娘だと擦り込まれていた故なのか、彼の優しさや正義感がそうさせたのかは分からない。
分からないけれど、父が言いたいことは分かった。
彼はその穴を埋める責任を自分に課したのだ、自らの意思で。


――君たちには私の願いを理解してくれる聡明さと、聞き入れてくれる優しさと強さがあると信じている――


「狡いこと言うよ……」

呟き、玲奈はまた少し泣いた。

父が遺した強制力のない言葉は、深い愛と信頼の証であり、鎖だった。
甘く優しく絡め取られて、正しい方向へ――彼が信じた正しいと思う方向へと引きずられる。