【完結】遺族の強い希望により

手紙には、エラとクロエについて書かれていた。
彼女たちは自分を実の肉親だと思い込んでいることや、自分も敢えてそういう態度で接してきたことなど。


――君たちは面白くないだろうが、どうか私の願いを聞いて欲しい。2人には、そう思い込んだままにさせてやって貰いたい――


「面白くないわよ、ほんとに」

「全くね。我が儘な人だわ、最後まで」

「……お父さんって、そうだったの?」

母が父のことを、言うことを聞かない子どもを叱るみたいな口調でそう言ったのは意外だった。
玲奈の質問に答える時、母の腕には少しだけ力が籠った。

「……だってあなたのお父さんは、自分が正しいと思ったことしかしてこなかったから」

――そうだ。そしてお父さんは、いつも正しかった。


今度もきっとそうなのだ。
高嶋隆司は優しく慈悲深く、そして、正しい。