【完結】遺族の強い希望により

「あったかい内に飲みなさい」

母はテーブルに用意した蜂蜜レモンを口では勧めたが、抱きしめた腕を放そうとはしなかった。

「ううん、いい。もうちょっとこのまま」

そこは凄く居心地が良いのだ。
玲奈も今は離れたくなかった。


――本当は嫌なのだと言えない君の弱さにも気付いていた。その健気な弱ささえ愛おしかったのだと今さら言っても、君は信じないかもしれないな。ああそうだ、私は気付いていて付け込んだのかもしれない。私は卑怯な男だ――


「卑怯だって。本当よ。お父さんは狡いわ」

触れあっていると、傷が和らいだ。

母も沢山傷付いて、出来ることならば刃を振いたいに違いない。
本当はその相手など誰でも良いのだ、オーストラリアにいるあの人たちでも、日本のマスコミでも、掲示板の住民でも。


けれど父は、その感情を飲み込まざるを得なくさせる。
狡いやり方だ。
でもそれが、彼の貫いた正義だった。