【完結】遺族の強い希望により

――君がこれを読んでいるということは、私に何かあったということだろう。大切な家族を日本に残したままそういう事態になってしまったことを、本当に申し訳なく思う――


「いつからあんなもの、用意していたのかしらね」

対面ではなく隣に座った玲奈を、母は子どもの頃のように抱き寄せてくれた。
頭を抱えるように肩口に押し付けられて、少し苦しいくらいで妙に気恥ずかしい。


――先に大切なことを書いておく。生涯たった1人の私の妻、美和子と、たった1人の私たちの娘、玲奈へ。君たちを愛している――


母の腕の中は落ち着いた。
背中をとんとんと叩く手が、懐かしく小さい頃を思い起こさせた。
レモンの香りが優しく漂って、傷口を柔らかく包み込んだ。


――美和子。君がジェシカのことを脅威に感じていたことを知っていた。それでも私をオーストラリアへ送り出してくれる君の優しさに甘えたことを許して欲しい――