【完結】遺族の強い希望により

父はそういう人だった。
強く、優しく、そしていつも正しい人だった。
最後の最後まで、高嶋隆司という男はそういう人間だった。

自分が正しいと思う道を、誰に流されることもなく真っ直ぐに突き進むことの出来る強い人だった。


「馬鹿……お人好し」

涙が止まらない。
けれどそういう父だから、尊敬し、愛してやまないのだ。


手紙を読む前に怒りを顕わにした玲奈に、母が微笑んだ理由が分かった気がした。

これを読んでしまったら言えなくなる。
母は恐らく誰にもその思いをぶつけることが出来ずに終わったのだ。
その行き場を無くした怒りを、玲奈が代弁した。
やるせない感情が共鳴して――、そして、昇華された。


「玲奈、こっちいらっしゃい。蜂蜜レモン、落ち着くわよ」

母が呼んでいる。
もう一度父の遺影に語りかけてから、玲奈は母の待つテーブルへ戻った。