手紙を持って、玲奈は再び父の前に移動した。
線香を上げ、鈴を鳴らし、手を合わせる。
今の気持ちのまま、一度父と向かい合っておきたかった。
遺影に向け、「読むよ」と宣言する。
口に出したことで覚悟が決まった。
封筒から便箋を引き抜くと、紙が震えてカサカサと音を立てた。
違う、震えているのは自分の手だ。
ひとつ深呼吸を入れる。
紙を開くと、『美和子へ』という見慣れた字が飛び込んできた。
父が綴った、母の名だ。
力強い文字を書く人だった。
少々右肩上がりだが、癖はそうない綺麗な文字だ。
筆圧が濃くて、一角一角の線がしっかりと太い。
止めるべきところはきっちりと止まり、跳ねるべきところははっきりと跳ね、はらうべきところは優しい曲線を描く――そういう文字だ。
線香を上げ、鈴を鳴らし、手を合わせる。
今の気持ちのまま、一度父と向かい合っておきたかった。
遺影に向け、「読むよ」と宣言する。
口に出したことで覚悟が決まった。
封筒から便箋を引き抜くと、紙が震えてカサカサと音を立てた。
違う、震えているのは自分の手だ。
ひとつ深呼吸を入れる。
紙を開くと、『美和子へ』という見慣れた字が飛び込んできた。
父が綴った、母の名だ。
力強い文字を書く人だった。
少々右肩上がりだが、癖はそうない綺麗な文字だ。
筆圧が濃くて、一角一角の線がしっかりと太い。
止めるべきところはきっちりと止まり、跳ねるべきところははっきりと跳ね、はらうべきところは優しい曲線を描く――そういう文字だ。


