【完結】遺族の強い希望により

父のために、怒っていたかった。
オーストラリアの憎むべき一家を、呪い続けていたかった。
曝し、貶め、ぶち壊してめちゃくちゃに不幸にしてやりたかった。

父が戻ってくるわけではない。
それでも名誉は取り戻せる。
父には後ろめたいことなど何もなかったのだと、世間に知らしめてやりたかった。

だがそうしたところで、父はもう帰ってこない。
父を殺された復讐を果たしたかった。
それが正しい感情だと、信じていたかった。


キッチンの様子をちらりと窺うと、母はわざと時間をかけているようにも見える。
戻ってくるのを待とうか、と思っていた玲奈の弱い気持ちは、どうやら認めてもらえないらしい。


――自分の目で見て、自分で納得しろ……。

初めから母はそう言っていた。
この手紙を自分で読むべきなのだ、読まなければいけないのだと、玲奈は漸くその状況を受け入れた。