【完結】遺族の強い希望により

「ココアは失敗だったわね」

「……は?」


母の妙に空気を読まない発言に、玲奈は怪訝に顔を上げた。
母は笑っていた。
何故か満足そうに、嬉しそうに微笑んでいた。

真意の分からないその反応に玲奈が狼狽えていると、母は玲奈の手から、握りしめていたマグカップをそっと取り上げた。

「蜂蜜レモンにしましょうか。入れ直してくるわ」

言いながら一旦マグを置くと、問題の最後の手紙をすっと取り上げて玲奈の手に握らせた。

読め、という意味だ。

母の口から、母の言葉で、母の気持ちを聞きたかった。
けれど手紙を残して、母はキッチンへ向かってしまった。


1人で手紙を開けるのは怖かった。
これを読んだら母の様に、自分の気持ちも変わってしまうのかもしれないと。