【完結】遺族の強い希望により

――止めて!

叫んだつもりだった。
だが、声は出なかった。

亮は妊娠したこと自体は喜んでくれたのだ。
それ自体が間違いだったとは、否定しないでくれたのだ。

両親に許しを請うためとは言え、嘘でも妊娠についての謝罪の言葉は亮の口から聞きたくなかった。

――謝らないで。

強く願いながら、だがここで謝罪が出来なければ、両親に認めさせることなど到底叶わないのではないかという矛盾した考えもまた、みのりの中には浮かんでいた。


「みのりさんが妊娠したことは――……」

亮は一旦そこで言葉を切った。
椅子から立ち上がり、父からも母からも見える位置に移動して床に膝をついた。
手をつき、頭を下げる。

――お願い。謝らないで、亮。


「申し訳ありません」