【完結】遺族の強い希望により

「それで本当に別れるなんて、大した絆だったわね」

母の皮肉は、隣で聞かされているみのりの心を深く抉っていった。

その通りだ。
何故あの時亮の本当の気持ちに気付けなかったのか、信じ切れなかったのか。
あの時何がお互いをあんなに不安にさせていたのか。


「理由は分かりました。もうお帰りいただいて結構よ」

「えー―」

母が放った冷たい言葉に、みのりは目を見開いて短い声を発した。
当然でしょう、とでも言いたげな視線がみのりに突き刺さる。

「こちらにはもう、話すことは何もありません」


待ってください、と縋りかけた亮の声に被せるように、『待て』をかけたのは父親だった。
だがそれは、亮の話を聞くためではなかった。


「貴様、まだ謝ることがあるだろう。何故まず最初に娘を妊娠させたことについて謝らない!」