【完結】遺族の強い希望により

茶が揃った。
もう引き止められる口実はない。
しかし盆を持ち上げようとすると、また止められた。

「母さんが運ぶから。そこ、片付けなさい」

横からするりと割って入った母が、そのまま盆を取ってしまった。

「なんで……っ」

みのりは片付けろという言いつけは聞かず、そのままキッチンから出て茶を運ぶ母の後へと続く。

ただ追いやられているだけなのが悔しかった。
自分はちゃんと向き合おうと覚悟を決めたのに。
亮は今立ち向かっているのに。
2人のために――2人と、その子のために。


だが次の瞬間、みのりは自分が茶器の並ぶ盆を持っていなかったことを感謝せざるを得なかった。
もしも持っていたら、熱湯と陶器の欠片が部屋に散乱したに違いない。


大きな影が振りかぶるように動いたと思うと、ごつ、と鈍い音が響く。
亮は両足で踏ん張って倒れこそしなかったが、上半身をよじり顎を押さえている。
殴られたのだ、本当に。


その瞬間を、みのりの前に立っていた母はよりはっきりと目撃したはずだった。
にも拘らず彼女は冷静に、一言こう言った。


「お茶が入りましたよ」